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灯 らん

Day 2 at Salisbury (28th, December 2019)

英国旅行記



 28日英国二日目、天気は雨の降りそうな曇り。この日は一旦ロンドンを離れ、Salisbury(ソールズベリー)はStonehenge(ストーンヘンジ)を見に行きました。Waterloo駅から South Western Railwayで1時間半、距離にして約137㎞。朝8時半の電車に乗っていざ出発です。


 朝ごはんは前日にスーパーで買っておいたCarrot Cakeとクリスマスの定番、Mince Pei。電車は空いていて、席にテーブルもついているので(多少汚いけど)快適でした。窓も大きく、英国の街並みをたっぷり堪能することができます。陽気な車内販売もあるので、喉が乾いても安心です。


Mince Pie

 到着したSalisburyの町は正しく”英国の町”!赤煉瓦の街並みが素敵です。想像していたよりも大きくて栄えている町でしたが、背の高い建物がとても少ないので教会の尖塔や遠くの山や空が見渡せるのが印象的でした。London以外の英国の町は大体こんな感じだそう。そしてびっくりしたのはLondonよりもずっと寒いこと。手袋を持ってきていて正解でした。

 

We waited for the bus at here.

 駅のすぐ近くで予約したバスに乗り込みます。駅からStonehengeまで連れて行ってくれるバスです。今回私たちはStonehengeのみ訪れましたが、同じバスでSalisbury Cathedral(ソールズベリー大聖堂)やOld Sarum(オールド・セイラム)を回ることもできるようです(それ用のチケットを事前に買っておく必要があります)。


 Salisbury Cathedralでは、現存する「マグナ・カルタ」の4つの写本の内、最も状態の良いものが保存されているようです。また尖塔は英国最長なんだとか。堂々たる威容は町からも見上げることができます。


 Old Sarumは紀元前400年頃から人が集まって住んでいた場所で、のちにウィリアム1世が城を建て、町へと発展していきました。Salisburyの前身のようなものです。ネット上で日本語ではほとんど詳しいことは見つからなかったので、詳しく知りたい方は以下のEnglish Heritageのサイトを見るといいかもしれません。



 豆知識はこの辺りで終わりにして。バスではイヤホンが配られ、座席についている機械にさすと道中ガイドを聞くことができます。多くの国の言葉に対応しており、もちろん日本語もあるので安心です。小雨の降る中バスは市街地を抜け、平原の中を30分ほど走りました。曇った窓の向こう、鈍色の重い雲とどこか褪せた色の平原では馬や羊が放し飼いにされ、目新しいような、どこか懐かしいような不思議な景色でした。


A flock of sheep.

 バスが到着した場所は、入場券売り場と土産物屋、小さな博物館の入っている建物群でした。平地の中にポツンと現れる、それら現代風の建物に驚きつつ、辺りを見回してもかの環状列石は見当たりません。どうやらStonehengeまではそこからさらに5分ほど無料バスに乗らなければ行けない模様。予約したチケットを受け取り、先に博物館を覗きます。Stonehengeの歴史やそこで見つかった遺物などを知ることができます。解説は全て英語なので、頑張って解読を。


 Stonehengeは何段階かに分けて建設され、直立巨石は紀元前2500年から紀元前2000年の間にかけて置かれたそう。土塁と塀はもっと古く、紀元前3100年まで遡るとか。紀元前、と言われてもすぐにはイメージし難いので、Wikipediaに記載されている紀元前3100年の出来事を挙げてみます。わかりやすいものでいうと、メソポタミアでは未だウルクが栄えている頃。また、インドの一大叙事詩、『マハーバーラタ』に描かれる争いの始まった時期だとか。一言で言うと、古代四大文明が栄えている神話の時代、です。ちなみに紀元前2500年は日本でようやく縄文時代に後期にあたるそう。


 Stonehengeは遥か神話の時代から現代まで、気が遠くなるような年月を見守ってきた遺跡なのです。なんのために建てられた遺跡なのかはいまだに解明されておらず、太陽の信仰のための儀式場、古代の天文台などの説があります。実際に、夏至の太陽はヒールストーンと呼ばれる石から登り、冬至には二つの直立する石の中央に太陽が沈むように精緻に配置されています。古代にそのような太陽の軌道を計算する術があったのだろうかと考えると、浪漫を感じます。


 また、かの有名な『アーサー王伝説』にも描かれ、マーリンが巨人を使役して作らせたとか、中央に登場人物の墓があるなどの話があります。


 そもそもなぜStonehengeなんて、「ただの石じゃん」と言われるような遺跡を見たかったのか言っていませんでしたね。特に興味のない方は読み飛ばしてください。熱くなるので。


 それは私が小学生中学年の頃、なんともなしにパラパラと百科事典をめくっていた時に見つけたのがStonehengeの写真でした。興味深い見た目に惹かれて解説を読んでみると、とても昔に作られたもので、なぜ作られたのかはいまだに解明されていない、と書かれており、夢みがちな幼き日の私にぶっ刺さりました。「何それ格好いい!!」って具合に。


 そして数年経った私は香川元太郎の迷路シリーズにどハマりしておりました。色々な時代や場所が迷路になっている絵本です。そこで偶然再開したStonehenge。イラストの中では石たちと共に住人の姿や妖精の姿も描かれており、写真では想像のつかない生き生きとした遺跡の姿にすっかり心を奪われてしまいました。当時からお話を書くのが好きだった私は、Stonehengeを舞台にした話を考えるほど、大好きで興味深い遺跡となったのです。

 以上が私とStonehengeの思い出話です。すっかり文字が多くなってしまいましたね……。現代に帰ってくることとしましょう!


The way to Stonehenge.

 博物館を出て、いよいよStonehengeへ向かいます。先述のバスを使うルートと、バスの道路を歩くルート、それから平原の中を歩くルートがあり、折角なので平原の中を歩くことに決めました。雨上がりのぬかるんだ平原に、すっかり靴はドロドロに。長靴を履いてくるのが正解だったかしれません……。相変わらず空気は冷たく、時々吹く風に耳が千切れそうでした。見渡す限りの平原の中には立ち入り禁止の箇所があり、そこは古墳や遺跡が遺っているようです。


 日本では考えられないくらい、どこまでも広がる平原に時々ぽつりぽつりと現れる羊の群れ。「これぞ正に"英国"の風景!」と友達とずんずん歩いて行きますが、あまりにも何もなくて方向感覚がおかしくなりそうでした。きっと先に人の姿が見えなかったらとても心細かったことでしょう。それが当たり前の古代の生活はどのようなものだったのだろうかと、考えずにはいられません。


 「英語で羊は複数形にならないの不思議ですよね。」「魚とかカラスもならないね、なんでだろうね。カラスはA murder of crowって数えるよ。」「格好いい!」なんて話をしている内に、遠くに人だかりが見えてきました。平原を長いこと歩いてようやくStonehengeに到着です。

Stonehenge

 憧れ続けた遺跡を目の前にして、第一の感想は「意外と緑!苔!」というとても残念なものでした。でもじわじわと感慨がこみ上げてきて、自分がこの巨大な石の目の前にいるのがとても不思議でなりませんでした。現在では夏至の早朝、冬至の日暮れの決まった時期にしか石の中に入ることはできません。それでも少し離れて見るだけで胸いっぱいです。太古の時代からここに在り、移りゆく時代を見てきた石たち。空を仰ぎ、太陽の軌道に置かれた石たち。何のために、どうやって作られたのか。その答えを石たちはこれからも口を噤み続けることでしょう。こんなにも夢と浪漫に溢れている遺跡が現代に遺されていることが嬉しくてたまりません。いずれ長い時の中で風雨にさらされ朽ち果てるまで、秘密を抱え続けていく太古の石たち。できるだけ長くこのまま在ってほしいものです。


 ぐるりと遺跡を周り、しっかりと目に景色を刻みつけました。すぐ側では羊たちが草を食み、少し先では道路を通る車の音。足の疲労感と、冷たい空気もいっぱい吸い込んで、きっとずっと忘れられない思い出になると確信しました。


 帰り道は疲れてしまったので、無料バスで博物館の方へ戻りました。土産物屋をちらりと覗いて、町へ戻ることにします。時刻はお昼過ぎ。そして長蛇の列のバス停……。何ということでしょう、1時間に一本しかバスが来ないのです。結構な観光客が来るので、もっと本数を増やしてほしいです。あと少しで乗りそびれるところでした。


Haunch of Venison

 町に戻ると、遅めの昼食を取りに「Haunch of Venison」(鹿の後脚の肉)というパブへ。友達が探してくれたこのお店は14世紀の建物をそのまま使っているらしく、Salisburyで最も古いパブと自認しているようです。確かに板張りの床は斜めっていて、時代を感じます。調度もアンティークなオークのものを使っていて、気分はすっかり中世です。


 私が頼んだのは「Twice Cooked Wiltshire Pork Belly」というメニュー。black puddingが英国に行ったら食べてみたい食べ物だったので、それも添えられている焼いた豚肉のプレートにしました。black puddingは所謂"血詰ソーセージ"。日本では中々お目にかかれないのでドキドキしながら料理を待ちます。


 with mash potato, braised red cabbage, black pudding, honey & mustard sauce
Twice Cooked Wiltshire Pork Belly

 驚くほど大きなお皿に盛られた温かいお肉たち。腹ぺこな今なら完食できる……!とナイフとフォークを手にとります。ちなみに料理の下にはたっぷりのマッシュポテトが盛られています。


 メインの豚肉は肉厚でジューシー。噛み締めるたびに肉の旨味が口いっぱいに。添え物の紫キャベツは柔らかく酸っぱすぎず食べやすい箸休め。black puddingはレバーペーストのような味わいに香辛料が効いていてとても美味しかったです。きっとレバーペーストが好きな人は好きな味だと思います。人参とポテトのソテーは「ポテト on マッシュポテト……私は一体何を……?」という気分にさせられます。


 結局惜しくもマッシュポテト完食とはいきませんでした。あまりにも、あまりにもポテトの暴力。このポテトとの戦いは英国にいた4日間ずっと続きました。元々ポテト好きの私も思わずポテトが嫌いになりかけるほどに。英国に行く際はポテトを嫌いになる覚悟を持っていってください。


The city was Illuminated.

 マッシュポテトとの格闘ですっかりお腹が苦しくなってしまったので、腹ごなしがてら町を散策することにします。パブを出たのは4時過ぎで、もう既に外は日が暮れていました。オレンジの街灯や、クリスマスのイルミネーションに彩られた町も情感があって素敵なもの。そこでたまたま見つけたアンティークショップに立ち寄りました。家具やティーセット、アクセサリーに置物まで、ありとあらゆるアンティークが売られており、値段もお手頃なものからお高いものまで。英国らしいものの中にアジアンテイストなものも混ざっていて、文化の混沌という雰囲気なのもまた興味深かったです。

 友人も私もこういったものに目がないので、すっかり見惚れてお土産と自分用にブローチを購入しました。

 

 そしてほくほくとアンティークショップを出た時に二人でとても大事なことを思い出しました。そう、乗ろうと思っていた電車に間に合わないことに……。帰りの電車は1時間に1本なので、さらに1時間待たなければいけません。外はすっかり真っ暗で、だんだんお店も閉まっていく町の中、駅の方面へ歩いて行くことに。立ち並ぶ家々の窓からはクリスマスツリーや生活の様子がチラリと垣間見え、これから家族揃って夕飯だろうか、とか団欒の時間を過ごすのだろうなと考えると、何だか温かいような気持ちになりました。


Someone who I never know live in this city.

 次の列車には遅れることなく無事に乗り込み、Londonへ。帰ってきてもお腹が膨れたままだったので、M&S(私が英国版成城石井と呼んでいる、ちょっとお高くていいものを売っているスーパー)で夕飯と朝ご飯を買い込んでホテルへ戻りました。軽めの夕食を取って次の日に向けて早めに就寝しました。


 明日はいよいよTate Modernへ!Londonの町を歩き回ります。




灯らん

 

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